亀のおっちゃん

お天気が良いし、図書館に本返しに行くか~と思って、息子連れて図書館へ行きました。

昨年引っ越したんですけど、ガッツリ車社会なのに電動自転車しか持ってない、ってか免許すら持ってないんでとにかく移動が大変で、さらに寒いもんだから基本家にこもりっぱなし。

私の体調がよくないのもあるんですけど、そもそも体力が落ちてるのに移動に体力取られるし息子も元気だし、家で暴れたおすし、八方ふさがりみたいな毎日でしんどくて。

 

そんななかで、意を決して行ったら臨時休館。
え~せっかく来たのに~マジか~と思いながら近くのコンビニでジュースとカフェオレ買って、図書館前のベンチで日向ぼっこしました。

 

したら、暑がりの息子が裸足になって、図書館前の広場を駆け回り始めたんですよね。

自分は結構おとなしい子供だったのでわんぱく坊主の心理がわからないし、危ないな~とか誰かに何か言われたらどうしよう~*1とか思いながら眺めていると、阪神の帽子かぶったおっちゃんが近寄ってきて。あ~なんかめんどいこと言われるかな…と身構えてたら息子見てハハハと笑いながら、

 

「裸足で気持ち良いよなあ、お天気もいいし」

 

えー、おっちゃん優しい。大体危ないよとか言われたりするんだけど。
しばらく「かわいいね~いくつ?」「2歳です」「かわいいけど大変な時期だねえ」「そうなんですよ」なんて会話をしながら、なんかおもちゃになるもんあるかな?とカバンをごそごそしたおっちゃんは、小さな袋を取り出した。

「これあげるよ、飲み込んだりしないかな?」

それはちっちゃいべっ甲の亀。1cmくらいの滅茶苦茶小さいの、2匹。
奥さんと娘さんが長崎旅行で貰ってきたお土産らしい。

そんなもの貰っていいのか…

「持っててもしょうがないんだしいいんだよ!君が引き継いでくれ!」

 

がはは、と笑うおっちゃんに、貰った亀で遊ぶ息子。
正直2歳児に亀の良さはわからなかったらしく、すぐ飽きて走り回ってしまった。でもそんな、よじ登ったり駆け回ったりする息子を眺めながら、

「こうやってよじ登ることに意味があるんだよな、体が成長するんだ」

とおじさん。意味はわかるんだけど、毎日元気な息子が理解できないしついてけないしであっぷあっぷの私はついポロっと「すぐダメだよって止めちゃうんです、危ないと思って」と零れた。たぶんこのおっちゃんなら、「大変だね」と言ってくれそうだと思って。ずるい理由ではあるんだけど。

そうしたらおっちゃんは、まあそうね、と。

「親の気持ちだからじゃないかな?おじいちゃんおばあちゃんの気持ちでいればいいんだよ。“危ない”じゃなくて、“かわいいね”っていう気持ちでさあ。お母さん若いからいろいろ考えるとは思うんだけど。大丈夫、よじ登って怒られたらごめんなさいすればいいし」

そのお返事は、大変だね、なんてもんじゃなかった。毎日つらいと泣く私を、ふざけんなふざけんな!と大泣きしながら自転車を漕ぐ私を救う言葉だった。

泣いた。こっそりだけど。

 

おっちゃんが「まあ育児なんてさ、いろいろやっても後悔残るもんなんだよな」と、聞こえるか聞こえないかくらいで零してたのが、とてもよかった。

ありがとう亀のおっちゃん。

 

 

 

ところでおっちゃんは都内で教師をやってたらしい。

息子はよく通りすがりの人にも宇宙人語で捲し立てるのだが、たいてい話しかけられた人は私に向かって「よくしゃべりますね~」と言うことが多い。でもおっちゃんは息子の話を淡々と聞いて「そうか!そうなんだな~!」と会話してくれて、あれは比較的子供と接する機会があったからなのかな…と思った

図書館に来た理由も「お勉強したくてさ」とのことで、カバンに入ったExcelやWordについての分厚い解説本を見せてくれた。「ここら辺の地域は歴史が古くて、日本史好きなら気に入るスポットが多いと思う」といろいろ解説してくれたりと、学ぶことが好きなのかなーという印象を受けた。

おっちゃんかっこいい。

そんな大人になりたいな……と思いながら、私の財布の中にはお守りのように、貰った亀が2匹住んでいる。

*1:まあどうもしないんだけど、必要以上に周りの目を気にしてしまう性分